2023-01-01から1年間の記事一覧

back number「one room」考察──「青い春」の先──

www.youtube.com back number「one room」は2012年のシングルアルバム『日曜日』のカップリングとして収録された作品である。「one room」はシングルを除くとアルバム、ベストアルバムともに未収録である。本作はback numberのファンクラブ「one room」の由…

back number「怪獣のサイズ」考察──性欲のユーモア──

www.youtube.com back number「怪獣のサイズ」は、本年8月4日に発表された配信シングル曲である。本作の内容を簡単に述べると、好きになった女性に既に恋人がいたという男の失望と後悔をコミカルに歌い上げたものである。本作には曲と併せてミュージックビ…

back number「君がドアを閉めた後」考察──「月やあらぬ」は蘇る──

www.youtube.com 月やあらぬ春や昔の春ならぬわが身ひとつはもとの身にして (『伊勢物語』第四段) 『伊勢物語』において、「月やあらぬ」が作中屈指の名歌であることに疑いはないだろう。「むかし、をとこ」という有名な書き出しで始まる伊勢物語は、昔こ…

back number「君の代わり」考察──引きずりから同伴へ──

www.youtube.com 前回「繋いだ手から」考察の中で、back numberのインディーズ時代とメジャー時代の違いについての私見を述べた。それは失恋経験に対する向き合い方であり、前者は過去の失敗を後悔ないし否定するもので、後者は過去の失敗を含めて肯定しよう…

back number「繋いだ手から」考察──失恋のカタルシス──

www.youtube.com 恋があたえうる最大の幸福は愛する女の手をはじめてにぎることである。 (生島遼一、鈴木昭一郎訳『スタンダール 恋愛論』人文書院、昭和38年、84頁) 19世紀、『赤と黒』などを著して近代小説の先駆者といわれたフランスの作家スタンダール…

back number考察──車窓と心象まとめ──

これまで五回に渡り、back numberにおける車窓と心象の関係を「then」、「海岸通り」、「fallman」、「march」、「電車の窓から」を通じて考察してきた。まずは整理がてら、それぞれの作品を簡単に振り返ってみる。 「then」における窓は車の窓であり、窓に…

back number「電車の窓から」考察──車窓と心象5──

www.youtube.com さて次は「電車の窓から」である。本作はメジャーアルバム『スーパースター』(2011)に収録されている。『スーパースター』はインディーズ時代のアルバム同様に失恋ソングを中心にされてはいるが、「ミスターパーフェクト」、「こぼれ落ち…

back number「march」考察──車窓と心象4──

www.youtube.com www.youtube.com お次は「march」である。本作も「fallman」と同じく『あとのまつり』に収録されており、語り手は恋人を彼女の家まで送迎する車中にいる。Wikipediaによると、題名の「march」は暦の三月という意味ではなく、自動車の日産・…

back number「fallman」考察──車窓と心象3──

www.youtube.com 続いては「fallman」である。本作は『逃した魚』次いで発表されたインディーズアルバム『あとのまつり』(2010)に収録されている。本作のタイトルには「man」とあるから一見すると男性目線のように思われるが、語り手は女性である。ではな…

back number「海岸通り」考察──車窓と心象2──

www.youtube.com www.youtube.com 次に「海岸通り」について考察する。「then」と同じく『逃した魚』(2009)に収録されている本作では、やはり失恋した人物の心象が語られており、歌い出しから「窓」という単語が登場している。語り手を悩ませているのは、…

back number「then」考察──車窓と心象1──

www.youtube.com www.youtube.com 本稿ではback numberにおける車、窓の描写と心象の関係について考察していく。back numberの歌詞に登場する「車」、「窓」という単語は、インディーズアルバムの『逃した魚』(2009)、『あとのまつり』(2010)といった、…